福利費の割合を工事・工種ごとに設定、算出方法を初めて明示
建設通信新聞の発表・報道によると、東京都は10月以降に公告する案件などを対象に、労務費ダンピングなど調査の試行を実施するにあたり、予定価格に含まれる法定福利費(健康保険料や厚生年金保険料など、事業主が法律上負担を義務付けられた保険料等の総称)における事業主負担額の概算額の算出方法を公表した。
公表された内容によれば、算出は工事・工種の区分ごとに割合を設定し、その割合を価格に乗じる方式をとる。財務局が積算基準(建築工事編)を適用する建築、電気設備、機械設備、昇降機設備、その他関連工事を対象とした場合、法定福利費の概算額の割合は昇降機設備工事が2%、それ以外の工事が5%とされている。
建設局と港湾局については、労務費ダンピングなど調査の試行対象となる案件に適用される。建築・設備などの工事の割合は財務局と同額だが、土木工事は1.49〜5.72%と工種によって幅がある。また、港湾局が発注する港湾工事では、港湾しゅんせつ工事が2.42%、港湾構造物工事が2.58%、港湾海岸工事が3.39%とそれぞれ設定されている。
改正入契法の全面施行を受け、労務費の行き渡りへ本格始動
今回の動きの背景には、2025年12月に全面施行された改正入札契約適正化法(改正入契法)がある。同法により、すべての公共発注者に対して労務費ダンピング調査が義務付けられた。
ただし、労務費ダンピングかどうかを判断するためには、従来の一式契約が一般的だった材工(材料費と労務費をまとめた形)を分離し、工事費の内訳を明示する必要があった。東京都は今回、この内訳明示に対応した形で算出方法を公表しており、労務費が工事に関わる労働者に適切に行き渡る仕組み作りが本格的に動き出したといえる。
編集部の見解——現場で働く人・経営者が押さえておきたいこと
一般に、建設業界では法定福利費が見積もりに適切に計上されず、下請け事業者や技能者の社会保険未加入問題につながりやすいと指摘されてきました。今回のように発注者が福利費の算出根拠を明示することは、元請・下請を問わず見積もりの透明性を高める一歩になるという見方もできるでしょう。
経営者・担当者の方は、今後の入札・見積もり対応において、自社が計上している法定福利費の割合が発注者の示す基準とどのような関係にあるかを確認しておくとよいでしょう。また、材工分離や内訳明示を求める動きが広がる可能性もあることから、原価管理や積算の体制を改めて点検しておく機会ではないでしょうか。
現場で働く方にとっては、こうした制度整備が社会保険への加入促進や適正な賃金の確保につながるものとして、長期的に注目していきたい動きといえます。今後の試行結果や他の自治体・発注機関の動向も併せて確認しておくことをおすすめします。