AI導入期でも現場職の求人倍率は1.94倍を維持
新建ハウジングの報道によると、厚生労働省が2026年9月29日に公表した2026年版「労働経済の分析」(労働経済白書)において、生成AIの普及後も建設などの「現場職」の労働需要が高い水準を維持していることが示された。
白書によれば、AI導入期には生産工程職の雇用や労働需要がやや減退した一方、現場職の有効求人倍率は2022〜2025年の平均で1.94倍を維持し、人手不足感も高まっている。同省は「AIによって労働需要全体が大きく鈍化している状況ではない」と分析しており、現時点では大きな雇用の減少が生じているとの裏付けも確認されていないとしている。
米国ではすでに配管工や自動車整備士などいわゆる「ブルーカラー」職種への注目が高まっているが、日本でも同様の傾向が数字として表れてきた格好だ。
大工の賃金上昇率119.4、研究者の113.9を上回る
賃金の動向でも現場職の存在感が際立っている。2022年の賃金を100とした場合、2025年時点での全体平均は109.9に上昇。AIの進化によって活躍が期待される「研究者」は113.9と大きく伸びたが、それを上回る勢いで「大工」が119.4、「タクシー運転手」が124.8まで上昇している。
また、一部では「事務職」から「現場職」への転職という動きも確認されており、白書はこうした職種間の移動にも言及している。ただし、AIの影響が今後遅れて顕在化する可能性は残るとされており、現状の数字をそのまま将来予測に当てはめることには注意が必要だ。
2040年に現場人材が約54万人不足、リスキリングの「見える化」が鍵に
将来見通しについては、経済産業省の予測として、2040年にはAI・ロボットなどの利活用人材が約340万人、「現場人材」(生産工程従事者を除く)が約54万人それぞれ不足すると推計されていることが白書で示された。
対応策として白書が強調するのは、専門学校や公的職業訓練を通じた人材育成と、企業によるリスキリング(学び直し)の成果を処遇・賃金に反映させる仕組みの整備だ。スキルや資格の取得が業務改善・高度化と結びつきやすい現場職において、キャリアパスに関する情報を積極的に「見える化」することが重要だと指摘している。
建設業界で働く人・採用に携わる企業にとって、この白書が示す含意は具体的だ。大工をはじめとする現場職の賃金は国全体の平均を明確に上回る速度で上昇しており、処遇改善が人材確保の有効な手段であることを政府の公式データが裏付けた。一方で2040年の54万人不足という数字は、現在30〜40代の職人が第一線を退くころに深刻化する問題であり、資格取得支援やキャリアパスの明示といった施策を今から設計しておく必要性を示している。